クロアチア女性作家作品 舞台公演のお知らせ
2019年09月03日( 火 ) ~ 09月15日 ( 日 ) 東京・信濃町の文学座アトリエにてクロアチア女性作家作品 「 スリーウインターズ 」 の舞台公演が日本初演になります。

【 作品紹介 】
スリーウインターズ( 原題 : Tri zime ( クロアチア語 ) / 英題 : 3 Winters )
本作品の作者であるTena Štivičić ( テーナ・シュティヴィチッチ ) はザグレブ大学演劇学校、ロンドンのゴールドスミス・カレッジを卒業。在学中に書いたデビュー作 「 Can't Escape Sundays 」 はヨーロッパ各地でラジオ制作や出版も行われ、数多く上演されており、その他の彼女の作品もヨーロッパを中心に10か国語で翻訳され、注目が集まる。本作は2014年ロンドン・ナショナルシアターで初演。翌年、スーザン・スミス・ブラックバーン賞を受賞。2016年にはクロアチア国立劇場でも上演。ヨーロッパを中心に評価されている41歳のクロアチア女性作家。彼女が描くのは、社会の波にもまれながらも尊厳をもって生きようとする四世代の女性たち。クロアチアの首都ザグレブに建つ家の1945年、1990年、2011年の冬の出来事を行き来して紡がれる物語です。
【 あらすじ 】
クロアチアの首都ザグレブに建つ、蔦の絡まる邸を舞台にした4世帯の女たちを中心にした、コス一家。1945 年11月。第二次世界大戦後パルチザンだったローズは、ナチスの協力者だったブルジョワジーの家を手に入れる。そこは彼女の母親モニカがかつてメイドとして雇われていた家、そして生後2 日のローズを抱えたモニカを追い出した家族の家だった。そこでローズは国防軍だった夫と生まれて間もない赤ん坊のマーシャと母親のモニカ、そして家に隠れていたこの家の元持ち主の娘カロリーナと生活を始める。1990年1月。ユーゴスラヴィア分断が決定づけられたこの日はローズの葬式の日。ローズの夫、カロリーナ、マーシャの夫ヴラド、娘のアリサとルツィア、妹のドゥーニャ、妹の夫たちが集まっている。2011年11月。クロアチアがEU加盟を固めた年。ルツィアの結婚式を翌日に控えた日、長らく親元を離れてイギリスで暮らしていたアリサが帰ってきている。この家は3家族が共同で使っていたが、ルツィアの夫は他の家族を追い出し、この家を元の姿に戻すため、これまでの家の歴史を否定している。この3度の冬を行き来して物語が進む。描かれているのは政治に翻弄され、時代の波にもまれながらもどう生きるべきかと戦う家族の物語である。
【 日本初演・演出 】
演出:松本祐子
出会いはニューヨークの本屋さんでした。表紙にひかれて購入したこの 「 スリーウインターズ 」 を読んで、このような作品がやりたかったんだと強く思いました。女性の目線で世界の在り様を見つめることで現代社会の問題を照射していて、しかしながら決して観念的ではなく、それぞれの時代の女たちが生活感をたっぷり醸し出しながら、それでいて社会の大きなうねりに何とか対抗しようともがきながら生きている姿が生き生きと描かれていて大きな共感を得ました。現代の経済至上主義やナショナリズムへの警鐘もなされていて、その問題意識はクロアチアだけではなくヨーロッパ、アメリカ、日本も変わらないと感じました。20世紀から21世紀にかけて女性の生き様は大きく変わりました。女には教育など不要と言われた時代から、教育こそが大切と認識された時代を経て、経済至上主義の考えが蔓延る現代において、女性の幸せはいったい何なのか? 個人の幸せを願うことと家庭の幸せを願うことと社会的な正義は両立するのか? 他人よりいい生活をしたいという単純な欲望は時に他者に対する激しい嫉妬を呼び起こします。愛する者を守りたいという欲望は時として他者を排除するという結果を招いてしまうこともあります。ひとつの家庭の三つの時代の物語はホームドラマでありながらも、ひとつの国家の物語でもあり、地球というひとつの星の物語でもあります。多くの矛盾を抱えながらも、自分の生きざまに責任を持つ努力を最大限にして、愛する者を守るために葛藤する人間の姿は、如何に生きるべきなのかという永遠のテーマを私たちに考えさせてくれます。歴史修正主義者があったことをなかったことにしようとしている今の日本にこそ、三つの時代の家庭という小さな社会の歴史を見つめて、歴史が現代に何を及ぼしているのかを問いかけるこの作品が必要なのだと思っています。
明治大学文学部文学科演劇学専攻卒業。
1992年文学座附属演劇研究所入所(32期)。
1997年座員昇格。文学座で初めて演出した「 冬のひまわり 」 ( 作/鄭義信 文学座アトリエの会 ) の好評により注目される。
その後1999年文化庁在外研修員として1 年間、ロンドンにて研修。
帰国後、文学座アトリエの会において 「 ペンテコスト 」 「 ホームバディ/カブール 」 など異文化間の対立を描いた問題作を発表。「 ペンテコスト 」 はその上演により湯浅芳子賞受賞。
2006年、「 ぬけがら 」 ( 文学座アトリエの会 ) 「 ピーターパン 」 ( ホリプロ ) の演出により第47回毎日芸術賞―千田是也賞受賞。その他主な演出作品に 「 犀 」 「 トロイアの女たち 」 ( 以上文学座アトリエの会 )「 秋の螢 」 「 大空の虹を見ると私の心は躍る 」 ( 以上、文学座本公演 )「 やけたトタン屋根の上の猫 」 「 鳥瞰図 」 ( 以上、新国立劇場 )「 ウーマン・イン・ホワイト 」 ( ホリプロ )「 ミザリー 」 ( コマプロダクション ) 「 罠 」 ( 俳優座劇場プロデュース )など。近作に自身で台本も手がけたのは 「 兄弟 」 ( 劇団東演 ) 「 喝采 」 ( 加藤健一事務所 ) 「 ヒトハミナヒトナミノ 」 ( 企画集団マッチポイント )。
【 公演概要 】
■出 演:寺田路恵、倉野章子、南一恵、山本郁子、増岡裕子、前東美菜子、永宝千晶、石田圭祐、斎藤志郎、得丸伸二、神野崇、上川路啓志
■日 程:2019年09月03日( 火 ) ~ 09月15日 ( 日 ) 約2時間30分の上演時間
■会 場:信濃町 文学座アトリエ 東京都新宿区信濃町10 ( JR中央・総武線 信濃町駅徒歩5分 / 東京メトロ丸ノ内線 四谷三丁目駅徒歩9分 )
■料 金:前売・電話予約 / 4,300円 当日 / 4,600円 ( ※当日券は開演の3時間前より、03-3353-3566( 文学座当日券申込専用 )でご予約 )
ユースチケット / 2,500円 ( ※25歳以下の方対象・取り扱いは文学座のみ。ご観劇当日、年齢確認ができる証明書等を提示 )
■問合せ:文学座 03-3351-7265 ( 10:00 ~ 18:00 日祝除く ) info@bungakuza.com
■チラシ:こちらの [ PDFファイル ] をダウンロードして下さい。
■文学座:スリーウインターズ公演ページ http://www.bungakuza.com/threewinters/index.html
■後 援:駐日クロアチア共和国大使館